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メーリングリストのメールが届かない!その原因と対策を解説します

執筆者の写真: 上羽 徹
上羽 徹
10月11日
読了時間: 6分

 町内会、PTA、同窓会、趣味のサークル、業界団体……。複数の人に一斉に連絡するために、メーリングリスト(ML)を使っている方は多いと思います。

 ところが最近、「MLに投稿したのに一部の人に届いていない」「迷惑メールフォルダに入っていた」という話をよく聞きます。しかも、届かなかったことは送った人にも受け取る人にも気づかれにくく、「連絡したはずなのに伝わっていない」というトラブルのもとになります。今回は、この問題の原因と対策を、ITに詳しくない方にもわかるように説明します。


先に結論

  •  原因は、MLの「受け取ったメールを配り直す」という仕組みと、メールの「なりすまし対策」との相性が、もともと悪いことにあります。

  •  なりすまし対策の目から見ると、MLのメールは「本人が出したメールを、途中で誰かが加工して、別の場所から送り直したもの」に見えてしまいます。

  •  最近は、メールを受け取りプロバイダーがなりすまし対策を厳しく運用するようになり、MからLのメールが迷惑メール扱いされるようになりました。

  •  有効な対策は、MLのサーバーが「差出人を自分のアドレスに書き換え、自分の名前で署名して配る」方式に切り替えることです。


まず知っておきたい「なりすまし対策」3つ

 迷惑メールや詐欺メールには、銀行や通販サイトの名前を勝手に使った「なりすまし」が多くあります。そこで、メールを受け取る側が「このメールは本当にその人(会社)が出したものか」を確認する仕組みが整えられてきました。代表的なものが、SPF、DKIM、DMARCの3つです。名前は難しそうですが、たとえ話で考えれば単純です。

  • SPF(発送元リスト):「この郵便局から出した荷物は正規のものです」という発送元のリストです。メールを送ってきたサーバーが、差出人のドメイン(アドレスの@より右側)の持ち主が認めたサーバーかどうかを確認します。

  • DKIM(封印):手紙に押された封印(電子署名)です。内容が途中で書き換えられていないか、その署名が差出人のドメインのものかを確認します。

  • DMARC(指示書):「確認に失敗したら、こう扱ってください」という差出プロバイダの指示書です。SPFとDKIMの結果を踏まえ、失敗時に「そのまま届ける」「迷惑メールにする」「拒否する」のどれを求めるかを示します。

ここで、次の3点だけ押さえてください。

  1. DMARCは、SPFとDKIMのどちらか一方が正しく通れば合格とする仕組みです。

  2. ただし合格するには、確認がとれた相手と、メールに表示されている差出人(「From」の欄)が同じドメインであることが必要です。これを「アライメント(一致)」と呼びます。封印が有効でも、封印した人が表示上の差出人と別人なら、不合格です。

  3. 差出人が「拒否してください」と指示していても、最終的にどう扱うかは受け取る側のプロバイダーが決めます。逆に、差出人が「そのまま届けて」と言っていても、受取プロバイダーが独自に厳しく判定することもあります。


なぜMLのメールだけ届かなくなるのか

 MLは、投稿されたメールを受け取り、登録者全員に配り直す仕組みです。たとえば、Gmailを使っているAさんがMLに投稿した場合を考えます。

 Aさん(Gmail)が投稿したメールは、MLサーバーを経由して、各メンバーに届きます。

このとき、次のことが起こります。


1. 内容が加工されます(封印が壊れます)。 MLは、件名に「[サークル003]」のような番号を付けたり、末尾に案内文を追加したりします。すると、Aさんのメールに押されていたDKIMの封印は、内容が変わったために壊れてしまいます。


2. 送信元が変わります(発送元リストに載っていません)。 各メンバーにメールを届けるのはMLサーバーで、Gmailのサーバーではありません。受け取る側から見ると、「Gmailを名乗るメールが、Gmailの発送元リストにないサーバーから届いた」ことになり、SPFも一致しません。


3. 差出人の表示はAさんのままです。 MLサーバーが自分のドメインで封印したり、自分のサーバーから送ったりしても、表示上の差出人(Gmail)とは別のドメインです。そのため、DMARCの合格条件である「一致」を満たしません。


 その結果、DMARCの判定は不合格になります。たとえるなら、「Aさん名義の荷物が、封印の破れた状態で、Aさんの郵便局ではない別の郵便局から届いた」ようなものです。受け取る側が不審に思うのも無理はありません。


最近になって目立ってきた理由

 この仕組み自体は昔からありました。それでも以前は、MLのメールが問題なく届いていました。変わったのは、受け取る側の対応です。


  • 差出人のドメインの側が、「確認に失敗したら迷惑メールにしてください、あるいは拒否してください」と指示するケースが増えました。

  • 受け取る側のプロバイダーも、指示の有無にかかわらず、認証に失敗したメールを迷惑メールにしたり、受信自体を拒否したりする運用を強めています。


 このため、以前は届いていたMLのメールが、迷惑メールフォルダに入ったり、そもそも届かなくなったりしています。

 なお、誰に届かないのかは、投稿した人が使っているメールサービスと、受け取る人のプロバイダーの組み合わせで決まります。同じ投稿でも、届く人と届かない人が出るのはこのためです。原因が見えにくい理由もここにあります。


対策:MLが「差出人を書き換え、自分で署名する」

 根本的な対策は、MLの側で次の処理を行うことです。

  • 表示上の差出人(From)を、MLのドメインのアドレスに書き換える。元の投稿者の名前は「○○さん via サークルML」のように表示し、返信先には元の投稿者を指定する。

  • そのメールに、MLのサーバーが自分のドメインで署名する(DKIM)。あわせて、自分のサーバーから送信する(SPF)。


 こうすると、封印も送信元も、表示上の差出人と同じドメインになります。つまり「一致」が成り立ち、DMARCに合格します。大規模な団体のMLが届きやすいのは、この方式をとっているところが多いためです。


MLの運営者が選べる方法

A.  Fromの書き換えだけを行うサービスを使う 

 国内で複数対応業者があり移行は容易ですが、署名は付けないため、SPFだけに頼ることになります。転送などで簡単に壊れ、受け取る側の運用次第で再び届かなくなる可能性が高く、将来を見据えると根本的な解決とは言いにくい方法です。


B. Fromの書き換えと自前署名ができるMLサービスに移行する 

 もっとも確実な方法です。ただし、署名まで行ってくれる国内業者は少なく、海外のサービスが中心になります。


C.  Googleグループ(Google Workspace)を使う

 有料のGoogleのサービスGoogle Workspaceを契約していれば利用できます。署名を付けることができ、必要に応じてFromの書き換えも自動で行なってくれます。大規模なMLでない限り追加費用がかかりません。ただし、差出人側のDMARCの設定が緩いと、Fromを書き換えてくれないので、厳しい受取プロバイダーの場合DMARCをパスしているにもかかわらず迷惑フォルダ行きになる可能性があります。しかし、その場合でもDMARCがパスしたメールなので、迷惑メールでない報告を繰り返すことにより是正される可能性が高いです。


今のMLで受け取る側ができること

  • 迷惑メールフォルダをこまめに確認する。

  • 投稿する人は、DMARCの規則が厳しいメールサービスから投稿すると届きにくいことがある、と心得ておく。

     なお、DMARCがフェイルのメールをいくら「迷惑メールでない」と報告しても改善される可能性はほとんどないです。


限界と今後の見通し

 プロバイダーの運用は年々厳しくなっており、将来は「SPFとDKIMの両方に合格すること」が事実上求められる可能性があります。現時点で確定した決まりではありませんが、署名を付けられる方式を選んでおくほうが、将来の変化に強いといえます。

 そもそも、メールという仕組みと、なりすまし対策との間には無理が生じています。長期的には、連絡手段全体の見直しも検討課題になるでしょう。


 
 
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