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奈良県庁管理職向けの人権研修を行いました

  • 執筆者の写真: 上羽 徹
    上羽 徹
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分

 2026年1月19日、奈良県庁役付き職員の皆様を対象とした人権研修を行いました 。テーマは「デジタル社会の危機管理 〜インターネットの仕組みから紐解く、部下を守り組織を律する管理職の役割〜」です 。

 昨今、自治体職員を標的としたSNS上の誹謗中傷や、執拗なカスタマーハラスメント(カスハラ)が深刻な課題となっています 。今回の講演では、単なる精神論ではなく、インターネットの技術的な仕組みと法的根拠に基づいた「組織としての守り方」について詳しくお話ししました 。


インターネットに「完全な匿名」は存在しない

 多くの人が誤解していますが、インターネット上の投稿は決して完全な匿名ではありません 。 アクセスプロバイダやコンテンツプロバイダの仕組みを紐解けば、発信者を特定する道筋は見えてきます 。

 ただし、そこには「3ヶ月の壁」という大きな制約があります 。プロバイダが通信記録(ログ)を保存している期間は一般的に3ヶ月程度であり、この期間を過ぎると投稿者の特定は極めて困難になります 。管理職には、被害が発覚した際の「迅速な初動」と「証拠保全」の知識が求められます 。


「公務員だから我慢しろ」が通用しない時代の安全配慮義務

 特に強調させていただいたのが、職員への被害に対する組織の姿勢です 。 かつてのように「公務員なら多少の暴言は耐えるべき」という考えは、現代では法的に通用しません 。

 年間800件以上の苦情にさらされるような過酷な事案では、職員一人に抱え込ませない体制づくりが不可欠です 。

 組織には労働者の安全と健康を守る「安全配慮義務」があり、ネット上の攻撃もその対象となり得ます 。

 加害行為に対しては、最新の「情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)」に基づいた削除要請や発信者情報開示請求など、毅然とした法的対応を検討すべきです 。


組織を律する:部下を「加害者」にさせないために

 一方で、職員自らがSNSや業務用チャットツールで不適切な投稿を行い、加害者となってしまうリスクも無視できません 。 匿名アカウントであっても、「奈良県職員」と特定された瞬間に組織の信用は一気に失墜します 。

 私的なSNS利用であっても、継続的・悪質な誹謗中傷は懲戒処分の対象となり得ます 。

 業務用チャットでの不適切投稿は、公務の信用失墜度が高く、より厳格な判断が求められます 。

 部下の不祥事を知りながら放置した場合、上司自身の管理監督責任が問われる可能性もあります 。


実践的なマネジメントのために

 ネット上の人権侵害やトラブルへの対応は、もはや技術論ではなく、「組織の信頼を守るためのマネジメント」そのものです 。

  1. 迅速な初動: ログ消去までのタイムリミットを意識した対応 。

  2. 組織的対応: 個人に負担を押し付けず、人事・法務・弁護士等と連携して「組織で守る」姿勢を示すこと 。

今回の研修を通じて、管理職の皆様がデジタル社会における新しいリスク管理のあり方を再認識する機会となれば幸いです。



講演レジュメの配布

 当日の講義で使用したレジュメは、下記リンクよりご確認いただけます。インターネットトラブルの防止や、自治体・企業の研修資料としてぜひご活用ください。

 
 
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